ゼピロスの降りた島

 

062 031

 

 

沈黙に支配された島の中を、私はずっと虚しさにとらわれながら歩いた。イヨネスコの「雑記帳」にある。「なによりも、消滅してしまわないこと、なによりも。じっととどまって、抵抗して、なおも存在すること・・・・・・。・・・・すべてのものは現にあるのだと意識すると、もうそれ以外のことは考えられなくなってしまった。が、それと同時に、すべてのものはこれまでもあったのだが、それは今とちがって、まったくちがって、恵みの光に照らされ、繊細でこわれやすいものだったことも意識したのである。」

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