ゼピロスの降りた島

 

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島に降り立ちすぐに分かったことは、この島を支配するのが沈黙であるということだ。あのピカートの「沈黙の世界」だ。「もしもこの壁がただ1枚の石でできているのならば、それは沈黙の記念碑のようなもの、ただ単に記念碑のようなものに過ぎないであろう。しかし、現にそうなっているように、それは多くの小さな石から構築されていて、大地から上へと立ちのぼり、縦横に拡がって行くから、この石の壁は例えば沈黙の四肢のようなものだ。ここには沈黙が生きている。それは記念碑ではないのである。」

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